攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 09 BYE BYE CLAY-

草薙素子が冒頭で雨は無の音が義体をすり抜けてゴーストを包んでいるようで嫌だと言っている.これは,義体化しているから感じる感覚なのだろうか.きっと雨が義体に当たる感覚はあるはずなので,無感覚だからそのように感じるということは無いように思える.何故,そのように感じるのかは書かれていないのでわからない.
雨の中でメガテクボディ社から逃走したロボットを捜索しているバトーはカッパを着て,頭にベトナムのノンラーのような帽子を被っている.バトーの後ろを歩く人も同じような帽子を被っているので,これは近未来では一般的なものであるという設定なのだろうか.
そこに,全裸の女性型のロボットが道に飛び出し,トラックかバスのような大型車とぶつかり,手と足を損傷する.そのロボットを捕獲して調べると,ロボットの電脳にはゴースト障壁が存在しているという.草薙素子はその障壁が,ゴーストダビングを行なった際に生じる擬似ゴースト障壁に似ていなくもなかったと言っている.ロボットがゴーストを持っているというのはあり得ないはずなのに,本当にゴーストが宿っているのだろうか.
そこに,外務省の中村審議官が現れる.中村審議官はロボットの中身を回収に来たと言う.中村審議官に同行して現れたドクターウィリスという男(アメリカのニュートロン社,戦略研究部長)は,電脳直結化をしておらず,20本弱の指で木ボードに入力を始める.電脳直結していれば,自分とロボットをケーブルで優先接続すれば良いだけなのだろうが,自分の子供と同じ世代の電脳医師に脳をいじられたくないという理由で電脳直結を行なっていないらしい.しかし,それでは通用しないので,20本弱の指で(恐らく,超高速に)キーボード入力をするらしい.
そこで,中村審議官はロボットの正体を人形使いだと明かす.人形使いはにも出てきた正体不明の凄腕ハッカーである.中村審議官の所属する条約審議部は別名公安6課と呼ばれている.公安6課は人形使いを追い続け,傾向や行動パターンを追い続けて来たらしい.その中で,対人形使い用の特殊攻勢防壁を創り,人形使いがどこかの機密ボディの中に入る(ダビングする)ように仕向け,入った段階で本体を暗殺した.中村審議官が説明を終えた頃に,ロボットが喋り始める.ロボットに入ったのは,6課の攻勢防壁に逆らえなかったためであるが,公安9課にいるのは自分の意思だという.また,生命体として政治的亡命を希望するという.人形使いが,自己保存のプログラムに過ぎないにも関わらず,情報の海(すなわちインターネット)で発生した生命体だと主張し,さらに,人形使いが生命体でないことを証明することは不可能だと告げる.その理由は現代科学では生命というものを定義できていないからという根拠を挙げる.その時,恐らく光学迷彩を纏った6課の関係者が突入し,人形使いを奪う.中村審議官は,一体ここの警備はどうなっているのかなどと言っているが,これは6課の自作自演のようなものなのだろう.また,この時突入した光学迷彩を纏った者の存在に,先に部屋を出て行った草薙素子とバトーは気づいていた.そこで,草薙素子光学迷彩を纏って部屋に戻り,突入があった際に荒巻部長の背中を押して助けた(この事に中村部長は気づいていた).そして,人形使いを奪って逃走した6課をバトーは追跡する.6課は人形使いをチェロのケースに格納して逃走しているらしい.9課は人形使いを乗せて逃走する車を抑えるが,その際に6課の人間は人形使いを爆破して破壊しようとする.損傷した人形使い草薙素子がダイブする.
ダイブして直ぐに,デカくて安定した記臆野の気配がすると言うと同時にピリピリすると言っている.これは,これはゴーストラインに達したと言う意味なのだろう.ゴーストライン(多分)を突破した草薙素子人形使いに私達が見えるかと問いかける.その後,草薙素子はゲートが開いて私を誘っていると言う.これは罠かもしれないので,バトーに身代わり防壁のセッティングを指示して,人形使いを自身の言語機能野に侵入させる(これをサポートするのは難しいことらしい).すると,プロジェクト2501が人形使いのコードネームだということがわかる.そのプロジェクトは企業探査,情報収集,および工作などで,ポイントを高めることを目的としていたようだ.特定のゴーストにプログラムを注入することで,企業や個人のポイントを増加させることを実行していたようだ.ここでいうポイントとはどのようなものなのかは明らかにされていないが,何かの評価値であることは間違いないが,例えば株価のように金銭的な価値のようなものなのかどうかはわからない.
ここで,人形使いは私はあらゆるネットを巡り「自分の存在」を知ったと言っている.ネットと言うとインターネットを思い浮かべるが,ここでのネットは,インターネットのみを指しているわけではない.ストーリーの舞台には当然インターネットも存在しているとは思われるが,世の中の大半のものがリンクしている.例えば,電脳化された人の脳同士もロンクでき,脳とロボットもリンクできるように.よって,ネットというのは接続可能なものでリンクした世界のようなものをイメージすれば良いだろうか.
そして,人形使いが「自分の存在」を知ったことを入力者はバグとみなし,分離するために人形使いをネットに移したと言っている.そのボディが話の冒頭で全裸で道に飛び出した全裸の女性型ロボットだったというわけだ.また,ここで人形使いが言った入力者とは外務省のことだ.
草薙素子は,そのことを証明するための記録を探す.それらの記録はニュートロン社の中央記憶野に隠されており,人形使いとのアクセスが滞るとその情報は自動的に9課に送信されることとなっているという.記憶にはポイントを増加させた企業や個人の記録が含まれている.
この時点で,人形使いのアウトプットが減少しすぎて,ホワイトアウトしてネット(接続と読み替えたほうがわかりやすいかもしれない)が切れていく.ここで,バトーはあまり深く潜ると記憶やネット自体が融合すると警告している.この後に義体ネットや記憶ネットまで消え始めたと人形使いが言っていることから,ネットは全ての接続を指しているのではないかと思われる.生身の人間の神経回路もネットに含まれると思われる.

 


その間の士郎宗方氏のコメントには,一般に個人という概念はその人の脳ではなく体全体を対象としている,ゴーストとは総体的肉体システムの状態であって,脳という容器に入っているエネルギーの塊ではないとある.すなわち,ゴーストとは脳のどこかに存在するものではないのである.草薙素子を例にとれば,彼女の本来の肉体は脳だけだが,脳があるからゴーストを持っているのではなく,脳と義体の全てが彼女のゴーストを形成しているということになるのだと思う.人形使いは,あらゆるネットを巡り,「自分の存在を知った」と言っている.これが,人形使いが語った,自分は情報の海で発生した生命体だという根拠なのだと思われる.草薙素子は,人形使いにそのことを証明できる記録が必要だという.その記録はアメリカのニュートロン社の中央記憶野に保存されており,人形使いからの接触が滞ると自動的に9課に送信されるようにプログラムされているらしい.草薙素子はダイブしながら様々な情報を送ってくるが,それらは今の私にはよく理解できない.この事については,別の機会に記していきたいと思う.
人形使いは最初は外務省が作成したプログラムだったが電脳データで企業データやゲームなどに融合していくうちに,自分は生命体だと言い出したために,慌てて回収に走ったらしい事は明らかとなった.

攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 08 DUMB BARTER-

冒頭でテロリストの相馬が脳のメンテナンスを受けている.メンテナンスと言うよりも,むしろバージョンアップのように見受けられる.これは後でわかることだが,ドイツ製思考戦車(シンク)とシンクロするために行ったことのようだ.相馬は,草薙素子が過去に唯一暗殺し損ねたテロリストという設定のようだ.ここで,士郎宗方氏のコメントに脳波は指紋同様個人識別が可能なので,アンプで増幅して鍵などに使うとある.脳波がどのような信号なのかは見たことがないが,そのようなものなのだろうか.

病院で治療(修理と言うべきか)を受けた草薙素子はトグサと一緒に車で移動する.この時,運転しているのはトグサだが,マニュアル車のようだ.機械が進歩しても車を扱う際には人間が制御した方がより高いパフォーマンスを発揮する,もしくは人間が思ったように制御できると言う設定なのだろうか.

トグサの運転する車で廃工場に到着し,尾行してきている連中から情報を得ようとしたところ,武装していることがわかる.少しして,もう一台大型のバンが到着し,そのバンをフチコマに破壊させるよう指示を出す.フチコマがバンを砲撃し,バンの近くに降りたところに,相馬のシンクロしている思考戦車が登場し,逆にフチコマは砲撃されてしまう.フチコマは損害を受けながらも「わお♡」などと言って,重装備の最新型戦車を見て喜んでいるところが面白い.これは,フチコマの思考が,自身を攻撃してくる可能性のある敵への恐怖(AIに対して感情として表現するのが適切かどうかはわからないが,攻撃による自身のこれ以上の損傷を避けるプログラムとでも言うべきかもしれない)よりも,最新型のメカニ対する興味の方が上回っていることの表現のように感じられる.

草薙素子は,思考戦車の攻撃によって左腕を損傷しながらも,トグサに指示を出しながら反撃のチャンスを探っている.この時,草薙素子は右手でナイフを使っている.前回の投稿(07 PHANTOM FUND)でも書いたが,やはりどちらの手でも先頭が行えるように訓練をしているようだ(当然と言えば当然なのだろうが).そこで,草薙素子は公安一課の彼氏と遭遇し,敵が公安一課であることを突き止め,本部に連絡する.本部のオペレーター(恐らくAI)は荒巻部長が公安一課の方に出向いていることを伝えるが,この時点で,荒巻部長は思考戦車が公安一課のものであることを突き止め,交渉に向かっていたようだ.荒巻部長は公安一課長に拳銃を突きつけ,思考戦車を退かせろと脅すが,思考戦車には相馬自身が乗って降り,公安一課では制御できないと告げる.公安一課は,相馬から麻薬王アナコンダの実名と麻薬取引の証拠を受け取る代わりに,草薙素子を売ったらしい.後でわかることだが,アナコンダ草薙素子にすでに射殺されて降り,公安一課の作戦は,全く意味のないことだった.公安は独自の判断で秘密裏に作戦を実行しているのだろうが,自分たちの作戦を成功させるために,課が違うとは言え,自分達の仲間を売る(しかも課員が独自の判断を行ったのではなく,公安一課長が判断している)ようなことは起こり得るのだろうか.恐らく,公安一課長にとっては,9課の課員を失うよりも情報を取得する方がメリットが大きいという判断なのだろう.設定では,実際にそのようなことが起こったということになっており,テクノロジーが発達しても,人間の思考にドロドロとしたものがある(この場合は,草薙素子の犠牲は止むを得ないという判断なのだと思われる.しかし,草薙素子はサイボーグだが,ゴーストを持っている.すなわち人間である)は変わらないということを表現しているように思える.

草薙素子の彼氏(公安一課の連中からは部長と呼ばれている)は,草薙素子をターゲットとすることを知らされていなかったようで,草薙素子を助けようとする.そこに,ボーマ(ボーマは登場回数が少ない...)がミサイルを打ち込み,思考戦車を破壊し,草薙素子は相馬を射殺する.

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過去の攻殻機動隊関連ログ

攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 07 PHANTOM FUND-

冒頭で草薙素子フチコマが,1課の戦車にアクセスした際に,何かとても大切な事が判ったような...と言っている.この接続は草薙素子によって切断される.このことは後のストーリには影響を及ぼさないが,フチコマ(ロボット)の苦悩を表現しているのかもしれない.また,フチコマは,天然オイルの使用を要求するが,草薙素子に即時に却下される.草薙素子によると,天然オイルを使用すると,アリ,カビ,凍結などで支障が出るとのことだ.何故,フチコマは天然オイルを要求したのかはわからないが,AIは学習によって,天然モノが良いという人間的な発想を真似たという事なのかもしれない.また,バトー専用のフチコマには天然オイルが入れられている.バトーは自分の乗るフチコマを決めていて,メンテナンスを行っている様子が-04 MEGATECH MACHINE 1-に描かれている.この時もバトーは変わった香りのオイルを入れて経験値を高めてやると言っているが,それらの効果については特に書かれていない.なお,この天然オイルに関しては,後のストーリーでオイルが粘る,糸のブレーキオイルが凍る(バトーはヒーターを入れていたようだが)などとトラブルの原因となっている.

択捉島に到着した際に,イシカワは光学迷彩を使用したフチコマでコンテナの上に着地する.その後に草薙素子は糸をはって有線しろ,今後一切の無線通信はするなと指示を出しているが,この糸をはるというのがどのような状態を指すのかがわからなかった.有線でダイレクト接続しろということなのだろうか.

択捉の雑踏を草薙素子フチコマが歩いている際に,草薙素子フチコマに絶対にはぐれるなという指示を出しているが,フチコマは露店で売られている(盗品らしい)の攻撃型装甲外骨格やまとんI号の記憶箱に惹かれてしまい,その品物とマニュピレーターを交換してくれなどと言って店員に怒鳴られ,涙を流しながら(涙はレンズ洗浄用の溶液らしい)記憶箱を盗んでしまう.フチコマは愛らしいキャラクターとして描かれているのはわかるが,これはロボット(AI)が自身の意思を持ち出している事の現れであると取ることもできる.草薙素子からの命令を受け,自分の仕事は理解しているはずなのに,誘惑に勝てずに自分の任務を忘れたような行動をしてしまうというのは,非常に人間的であると思った.記憶箱を盗んで逃走したフチコマは,草薙素子との糸が切れていると言っている.ここでも糸が出てくるが,それがどのようなモノを指しているのかはわからない.また,その時に新米の矢野が殺され,そのことについて部長に文句を言っている事を草薙素子が知っている.バトーが部長に文句を言おうとして,応答しろと言ったときに,イシカワが止せと言っているのが無線での通信をやめろと言っているのか,文句を言うのをやめろと言っているのかがわからないので何とも言えないが,前者であれば,草薙素子が無線を聞いたと言うことになる.また,後者であれば,無線通信を行っていないことになり,バトーが部長に噛み付いた事を草薙素子がどのようにして知ったのかがわからなかった.また,先にも書いたように,バトーのフチコマが降下していく際に,天然オイルが原因で,糸のブレーキオイルが凍るというトラブルが生じる.ここで言う糸は,フチコマのお尻から出ている,降下の際にぶら下がる糸だと思われる.ということは,糸は実在するケーブルのことを指すのではないかという結論に至った.

雑踏の中で草薙素子は背中に斧を刺されるが,何の支障もないようだ.背中に斧を刺して車で走り去った犯人はあっさりと射殺されてしまう.草薙素子のボディは相当硬固なものを使用しているという設定なのだろう.

草薙素子写真屋という設定でスイスイと佐川電子の中に入って行くが,これはクロルデンが佐川電子の警備主任の脳に直結し,情報の書き換えを行ったからである.クロウデンは草薙素子を40年来佐川電気に出入りしている上沢写真館の跡取り娘だという設定に書き換えたのだろう.凄腕のハッカーにかかると,このようなことがすぐにできてしまうということのようだ.警備主任は書き換えられた情報を自分の記憶だと信じて,草薙素子を見るたびに上沢写真館の跡取り娘だと思うのだろう.

佐川電子内に侵入した草薙素子は警備ロボットに身分証と許可証を提示するようにと言われた際に,反射的に拳銃を抜いてしまう.フリーパスを用意していたので,それを提示すれば良かった訳だが,その際に草薙素子は左手で拳銃を扱っている.表紙では右手で構えている.当然,どちらの手でも取り扱えるように訓練していると思われるが,ここで,義体化した際に利き手はどうなるのだろうかと思った.利き手を使うというのは脳から指令が出ていることは間違いないと思われるが,一方で,利き手でない方の手で何かをした際に上手くできないなど,身体的な感覚でもある気がする.以前の投稿(02 SUPER SPARTAN)でも書いたが,草薙素子には,義体化している義手が痛むといった身体的な感触が残っていることが書かれていることから,利き手の感覚が残っているものと推察する.

侵入後,ロボットを射殺した後に端末にアクセスした際に,キン,ビュンという音と共に草薙素子に向かってくる光のようなものが描かれている.攻性防壁は,このようなイメージで攻撃してくるようだ.

加賀崎二佐と戦っている際に,草薙素子光学迷彩を使用するが,その時に加賀崎二佐は身体が消える(見えなくなる)と同時に床の感圧反応まで消えていくと言っている.光学迷彩を使用して見えなくなったとしても,本体はその場にいるので,感圧反応は消えないはずだと思われるが,これは一体どのような仕組みになっているのだろうか.

最後のコマで,草薙素子は択捉の雑踏の中でとはぐれてしまったフチコマに文句を言っている.普通に考えると,任務中に何処かへ行ってしまったということで,叱られているというように解釈できるが,絵の具雰囲気はそうではない.フチコマも「へへっ」などと言って悪びれる様子もない(そもそも,AIに悪いことをしたとか迷惑をかけたという概念を持たせることができるのだろか).これは人間とロボットの関係ならではなのだろうか.

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過去の攻殻機動隊関連ログ

攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 06 ROBOT RONDO-

物語は,阪華精機の重要顧客に提供されている試供品のトリムアンデ型ロボットが暴走するところから始まる.提供されたのは荒巻部長の元上司である殿田大佐だ.

シーンは変わってバトー,トグサ,および草薙素子がトリムアンデ型ロボットの回収にあたっている(バトーはサングラスをかけているので,最初は新たな登場人物かと思ってしまった).バトーがトリムアンデ型でない暴走ロボットを撃退している時に,トグサがトリムアンデ型を回収したようだ.その後,バトーと草薙素子が新浜県警に向かうと,暴走したロボットが多数勾留されていた.これらのロボットは,自らを故障する事によって,人間を攻撃する許可を作り出しているという(人間を攻撃できないようにプログラムされているプロテクトを外すという意味だろう).この事象はロボットの反乱を表しているようだ.自ら故障し,人間を攻撃する理由は,持ち主に捨てられたからだと鑑識課の警官が言う.愛玩用や工業用のロボットは,モデルチェンジで新製品を購入した際に捨てられるとの事だ.捨てられたロボット達は浮浪化,野生化してどこかの段階で自ら故障して,人を襲うという設定のようだ.また,人を襲う理由は自分たちの使い捨てをやめて欲しいためだと鑑識課の警官が説明している.襲う理由は,使い捨てられた復讐のようにも感じるが,ロボットには怨恨といった感情は生じないと思われるので,やはり人を襲う理由は使い捨てをやめて欲しいという事になるのだろう.ここで,AIが何故,そのような行動とるのかを考えてみると,使い捨てにされる事が嫌だという感情ではなく,廃棄されいつか致命的な故障をしてしまい,機能不全となってしまう事を避ける(AIは,自身が故障したり損傷を受けることを回避するプログラムを持っているはずなので)ためなのではないかと思った.そのことが,使い捨てをやめて欲しいという表現になっているのではないだろうか.

冒頭で暴走した殿田大佐のトリムアンデ型は,自ら故障したのではなく急にエラーが出たような症状になってを襲っているので,自ら故障して,暴走するロボットとは違う理由でを襲ったことがわかる.

荒牧部長と草薙素子が殿田大佐の警護解除を告げに行った際に,大佐を襲ったトリムアンデの電脳部門にSOSと血で書かれていたと荒牧部長が草薙素子に告げる.これは,トリムアンデを暴走させた犯人が,警察にSOSメッセージを送るために仕組んだという事だ.これらの会話は,バトーにも転送されていて,会話が終わった段階でバトーも状況を理解している.このようなことが可能になれば,非常に便利であり,電脳化の恩恵の一つだと言える(当然,通信を傍受されてしまうというリスクはあるが).

場面は阪華精機の社長室のようなところに映る.そこには箱型でジェイムスン型と呼ばれるサイボーグである阪華精機の社長が出荷検査部長を呼び出している.それにしても,このジェイムスン型のサイボーグにはどのようなメリットがあるのだろうか.移動もガチャガチャなどと音を立てて,素早い動きは到底できなさそうだし,見てくれも全く良くない.しかし,阪華精機というロボットメーカーの社長がその型を選んでいるということは,色々なものを失ってもそれに代え難い良さがあるのだと推測する.

ここで士郎宗方氏は,我々は一般に脳と身体を区別して考えるように教育されているが,脳自体が全身を巡る神経ネットの一部であり,システムの部分なのだということを忘れてはならないとコメントしている(おそらくジェイムスン型のサイボーグの中に入っているのは脳だけという事に対してのコメントだと思われる).システム(人体)の一部分を機械化して代行する事は可能だが,多くの端末器を除去してしまうと,自律神経の出力がほぼ消失するという小論を読んだことがあると述べている.確かに,脳は重要な器官であることは間違いない.一方で,人体と言うシステムは,部分的な置き換えは可能であっても,大半を置き換えてしまうと核となる部分(すなわち,脳)が残っていても別物になってしまう,もしくは,別物になるだけなら良いが,システムとして機能しなくなってしまうことを表している.これらは,機械製品やコンピュータープログラムなどを思い浮かべると理解しやすい.または,イメージだけで言うと,何らかの文章を書いていて,その文章で主張したいことなどの核心部分を残して,どんどん改良や付記を行っていくと,上手く繋げたつもりでも,矛盾があったり何かが変な文章となってしまうこととも似ているかもしれない.確かに,どのようなシステムにおいても,中核部分だけが優れていても上手く機能しない.良いと言われるシステムは中核部分と末端部分,またはそれらを繋ぐ部分のバランスがとれていて,システム全体として良好なパフォーマンスを出すものだと考えると,改良のためにどんどん置き換えていけば良いと言うわけではないという事には納得できる.当然,攻殻機動隊は脳だけが残っても(前,話では脳と脊髄部分だけ)元々のシステムの改良版として機能できるようになっているという前提での物語である.

阪華精機の社長の拷問によって,検査部長は問題のあったトリムアンデが狂うように仕込んだ事を自白する.検査部長がそのような事をした見返りは,ゴーストダビングを行なうために連れてこられた子ども達と2晩過ごすことだったのだろうか.検査部長は「2晩---」としか言っていないので,何だったのかは良く分からないままだ.攻殻機動隊では,オリジナルの脳のみがゴーストを持ち,それがゴーストダビング(複製)されるとオリジナルの脳が破壊されることになっている.また,ゴーストダビングされたAIにはゴーストが宿らないことになっている.つまり,SOSを送った子ども達は,ゴーストダビングによって,自信の脳が破壊されてしまうことを知って,それを避けるために,すなわち使い捨てにされることを回避するためにSOSを送ったのだ.これは,先に出てきたロボット達が使い捨てにされることを回避するために取った行動と同じであると言える.両者ともに死の恐怖から逃れるための行動だと言って良いと思う.ゴーストの宿る生身の人間も,ゴーストを持たないロボットも同じ行動を取るという対比なのではないかと感じた.

バトーとトグサに追い詰められた阪華精機の社長は逃亡中に船に乗り移る際に海に落ちて捕まってしまう.例のガチャガチャと不器用にしか動けない義体が原因だ.こんなことになってしまうのと引き換えに,ジェイムスン型にはどのようなメリットがあったのだろうかと気になってしまう.

結果として殿田大佐と阪華精機との癒着がバレてしまう.このことは操作の副産物的なもので,殿田大佐がテロを恐れて荒巻部長に警護を依頼しなければ,バレないことだった.

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過去の攻殻機動隊関連ログ

攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 05 MEGATECH MACHINE 2-

冒頭の士郎宗方氏の注釈に,サイボーグとは身体の一部,或いはほとんどを人工器官で代用する改造人間のことであるとある.示されている図は9割以上を機械化したサイボーグで,本来の肉体は脳や脊髄で,それらは全てカバーの中に入っているらしい.9割以上の器官は生身の人間と似ている箇所もあれば(例えば筋肉など),そうでない部分も存在するが,全体的に人間の基本的な構造を模して作成されているという設定のようだ.また,皮膚等は,恐らく人間と見分けがつかない程度に仕上げることもできるという設定のようだ.
脳や脊髄以外の部分を義体化する場合を全身義体化サイボーグと言い,部分的に人工機器,義体化した場合についても説明がされている.このように部分的な義体化は人間の能力を補うことで,全身義体化は生身の人間を超える人間を作ることと説明されている.
草薙素子は全身義体化されているので,例に示されているように,脳と脊髄,もしくは脳だけが本来の姿なのだろう.彼女は,自分の脳を見たわけではないので,周囲の状況から脳が自分の本来の持ち物と認識しているだけで,実は本来のものは脳細胞2, 3個だけだった模擬人格なのではないかなどと冗談交じりに話しているが,このような悩みは義体化,電脳化が進んだ時代ならではの悩みなのかもしれない.
一方で,生身の人間は,自分の肉体を見ることができ,怪我をした場合は血を見たり,場合によっては肉などを見る事になる.しかし,それらも自分のものだと状況から認識しているだけなのではないかなどと考えることもできる(確か,映画マトリックスでは人々は仮想空間の中で身体的感覚を感じているように思い込んでいるが,実際の体は培養器のようなものに繋がれ,仮想空間のプログラムの中で生きているといった設定であったと記憶している)このようなことを考え続けていると,何もかもが信じられなくなるが,人間は自身が認識している状況が真実であるという前提のもとで生きていることは間違いない.なので,各自によって見えているものは同じはずでも,解釈やその記憶が異なってくる.それが多様性という言葉で表される人間の面白さである一方で,見解の相違や,場合によっては信条の違いとなり,争いを引き起こす元にもなるのではないかと思った.

草薙素子の友人は,人間が人間であるための部品が決して少なくないという.自分を認識するためには,自分での顔,自分の声,自分の身体,そして自分の記憶が必要であると思う.
自らがゴーストを持っている人間であることを自ら確認するためには,色々なものが必要だということだ.ある日,鏡を見た瞬間に違う自分が映っていたら,声が突然変わってしまったら,手が自分のものではないものに変わっていたら,過去の一部分の記憶が抜け落ちてしまっていたらなどと考えると,どれが起こっても,これは自分ではないとパニックになるだろう.一方で,以前の話(リンク)に出てきたように,それらの感触を含む記録を作り変える,すなわち偽りの記憶を送り込んでそれを本人が信じ込むようにさせることもできる.すでに登場はしたものの,謎の存在である人形使いだ.ゴーストは,記憶と身体性とイコールではないが,間違いなくそれらを含んでいる.
以前にもゴーストとアイデンティティの類似性について考えてみたことを書いた.その時は似ている箇所は多々あると思われるが,結局,アイデンティティ自体がよくわからないので,同じものだとは言ってしまうことはできないと考えた.
アイデンティティの定義は,自己を確立する要素の事だと定義すると,

アイデンティティ = 人間が人間であるための部品(すなわち,自分を認識するためには,自分での顔,自分の声,自分の身体,そして自分の記憶など)

ということになるので,ゴーストとは異なることになると思う.

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