攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 06 ROBOT RONDO-

物語は,阪華精機の重要顧客に提供されている試供品のトリムアンデ型ロボットが暴走するところから始まる.提供されたのは荒巻部長の元上司である殿田大佐だ.

シーンは変わってバトー,トグサ,および草薙素子がトリムアンデ型ロボットの回収にあたっている(バトーはサングラスをかけているので,最初は新たな登場人物かと思ってしまった).バトーがトリムアンデ型でない暴走ロボットを撃退している時に,トグサがトリムアンデ型を回収したようだ.その後,バトーと草薙素子が新浜県警に向かうと,暴走したロボットが多数勾留されていた.これらのロボットは,自らを故障する事によって,人間を攻撃する許可を作り出しているという(人間を攻撃できないようにプログラムされているプロテクトを外すという意味だろう).この事象はロボットの反乱を表しているようだ.自ら故障し,人間を攻撃する理由は,持ち主に捨てられたからだと鑑識課の警官が言う.愛玩用や工業用のロボットは,モデルチェンジで新製品を購入した際に捨てられるとの事だ.捨てられたロボット達は浮浪化,野生化してどこかの段階で自ら故障して,人を襲うという設定のようだ.また,人を襲う理由は自分たちの使い捨てをやめて欲しいためだと鑑識課の警官が説明している.襲う理由は,使い捨てられた復讐のようにも感じるが,ロボットには怨恨といった感情は生じないと思われるので,やはり人を襲う理由は使い捨てをやめて欲しいという事になるのだろう.ここで,AIが何故,そのような行動とるのかを考えてみると,使い捨てにされる事が嫌だという感情ではなく,廃棄されいつか致命的な故障をしてしまい,機能不全となってしまう事を避ける(AIは,自身が故障したり損傷を受けることを回避するプログラムを持っているはずなので)ためなのではないかと思った.そのことが,使い捨てをやめて欲しいという表現になっているのではないだろうか.

冒頭で暴走した殿田大佐のトリムアンデ型は,自ら故障したのではなく急にエラーが出たような症状になってを襲っているので,自ら故障して,暴走するロボットとは違う理由でを襲ったことがわかる.

荒牧部長と草薙素子が殿田大佐の警護解除を告げに行った際に,大佐を襲ったトリムアンデの電脳部門にSOSと血で書かれていたと荒牧部長が草薙素子に告げる.これは,トリムアンデを暴走させた犯人が,警察にSOSメッセージを送るために仕組んだという事だ.これらの会話は,バトーにも転送されていて,会話が終わった段階でバトーも状況を理解している.このようなことが可能になれば,非常に便利であり,電脳化の恩恵の一つだと言える(当然,通信を傍受されてしまうというリスクはあるが).

場面は阪華精機の社長室のようなところに映る.そこには箱型でジェイムスン型と呼ばれるサイボーグである阪華精機の社長が出荷検査部長を呼び出している.それにしても,このジェイムスン型のサイボーグにはどのようなメリットがあるのだろうか.移動もガチャガチャなどと音を立てて,素早い動きは到底できなさそうだし,見てくれも全く良くない.しかし,阪華精機というロボットメーカーの社長がその型を選んでいるということは,色々なものを失ってもそれに代え難い良さがあるのだと推測する.

ここで士郎宗方氏は,我々は一般に脳と身体を区別して考えるように教育されているが,脳自体が全身を巡る神経ネットの一部であり,システムの部分なのだということを忘れてはならないとコメントしている(おそらくジェイムスン型のサイボーグの中に入っているのは脳だけという事に対してのコメントだと思われる).システム(人体)の一部分を機械化して代行する事は可能だが,多くの端末器を除去してしまうと,自律神経の出力がほぼ消失するという小論を読んだことがあると述べている.確かに,脳は重要な器官であることは間違いない.一方で,人体と言うシステムは,部分的な置き換えは可能であっても,大半を置き換えてしまうと核となる部分(すなわち,脳)が残っていても別物になってしまう,もしくは,別物になるだけなら良いが,システムとして機能しなくなってしまうことを表している.これらは,機械製品やコンピュータープログラムなどを思い浮かべると理解しやすい.または,イメージだけで言うと,何らかの文章を書いていて,その文章で主張したいことなどの核心部分を残して,どんどん改良や付記を行っていくと,上手く繋げたつもりでも,矛盾があったり何かが変な文章となってしまうこととも似ているかもしれない.確かに,どのようなシステムにおいても,中核部分だけが優れていても上手く機能しない.良いと言われるシステムは中核部分と末端部分,またはそれらを繋ぐ部分のバランスがとれていて,システム全体として良好なパフォーマンスを出すものだと考えると,改良のためにどんどん置き換えていけば良いと言うわけではないという事には納得できる.当然,攻殻機動隊は脳だけが残っても(前,話では脳と脊髄部分だけ)元々のシステムの改良版として機能できるようになっているという前提での物語である.

阪華精機の社長の拷問によって,検査部長は問題のあったトリムアンデが狂うように仕込んだ事を自白する.検査部長がそのような事をした見返りは,ゴーストダビングを行なうために連れてこられた子ども達と2晩過ごすことだったのだろうか.検査部長は「2晩---」としか言っていないので,何だったのかは良く分からないままだ.攻殻機動隊では,オリジナルの脳のみがゴーストを持ち,それがゴーストダビング(複製)されるとオリジナルの脳が破壊されることになっている.また,ゴーストダビングされたAIにはゴーストが宿らないことになっている.つまり,SOSを送った子ども達は,ゴーストダビングによって,自信の脳が破壊されてしまうことを知って,それを避けるために,すなわち使い捨てにされることを回避するためにSOSを送ったのだ.これは,先に出てきたロボット達が使い捨てにされることを回避するために取った行動と同じであると言える.両者ともに死の恐怖から逃れるための行動だと言って良いと思う.ゴーストの宿る生身の人間も,ゴーストを持たないロボットも同じ行動を取るという対比なのではないかと感じた.

バトーとトグサに追い詰められた阪華精機の社長は逃亡中に船に乗り移る際に海に落ちて捕まってしまう.例のガチャガチャと不器用にしか動けない義体が原因だ.こんなことになってしまうのと引き換えに,ジェイムスン型にはどのようなメリットがあったのだろうかと気になってしまう.

結果として殿田大佐と阪華精機との癒着がバレてしまう.このことは操作の副産物的なもので,殿田大佐がテロを恐れて荒巻部長に警護を依頼しなければ,バレないことだった.

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