攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 05 MEGATECH MACHINE 2-

冒頭の士郎宗方氏の注釈に,サイボーグとは身体の一部,或いはほとんどを人工器官で代用する改造人間のことであるとある.示されている図は9割以上を機械化したサイボーグで,本来の肉体は脳や脊髄で,それらは全てカバーの中に入っているらしい.9割以上の器官は生身の人間と似ている箇所もあれば(例えば筋肉など),そうでない部分も存在するが,全体的に人間の基本的な構造を模して作成されているという設定のようだ.また,皮膚等は,恐らく人間と見分けがつかない程度に仕上げることもできるという設定のようだ.
脳や脊髄以外の部分を義体化する場合を全身義体化サイボーグと言い,部分的に人工機器,義体化した場合についても説明がされている.このように部分的な義体化は人間の能力を補うことで,全身義体化は生身の人間を超える人間を作ることと説明されている.
草薙素子は全身義体化されているので,例に示されているように,脳と脊髄,もしくは脳だけが本来の姿なのだろう.彼女は,自分の脳を見たわけではないので,周囲の状況から脳が自分の本来の持ち物と認識しているだけで,実は本来のものは脳細胞2, 3個だけだった模擬人格なのではないかなどと冗談交じりに話しているが,このような悩みは義体化,電脳化が進んだ時代ならではの悩みなのかもしれない.
一方で,生身の人間は,自分の肉体を見ることができ,怪我をした場合は血を見たり,場合によっては肉などを見る事になる.しかし,それらも自分のものだと状況から認識しているだけなのではないかなどと考えることもできる(確か,映画マトリックスでは人々は仮想空間の中で身体的感覚を感じているように思い込んでいるが,実際の体は培養器のようなものに繋がれ,仮想空間のプログラムの中で生きているといった設定であったと記憶している)このようなことを考え続けていると,何もかもが信じられなくなるが,人間は自身が認識している状況が真実であるという前提のもとで生きていることは間違いない.なので,各自によって見えているものは同じはずでも,解釈やその記憶が異なってくる.それが多様性という言葉で表される人間の面白さである一方で,見解の相違や,場合によっては信条の違いとなり,争いを引き起こす元にもなるのではないかと思った.

草薙素子の友人は,人間が人間であるための部品が決して少なくないという.自分を認識するためには,自分での顔,自分の声,自分の身体,そして自分の記憶が必要であると思う.
自らがゴーストを持っている人間であることを自ら確認するためには,色々なものが必要だということだ.ある日,鏡を見た瞬間に違う自分が映っていたら,声が突然変わってしまったら,手が自分のものではないものに変わっていたら,過去の一部分の記憶が抜け落ちてしまっていたらなどと考えると,どれが起こっても,これは自分ではないとパニックになるだろう.一方で,以前の話(リンク)に出てきたように,それらの感触を含む記録を作り変える,すなわち偽りの記憶を送り込んでそれを本人が信じ込むようにさせることもできる.すでに登場はしたものの,謎の存在である人形使いだ.ゴーストは,記憶と身体性とイコールではないが,間違いなくそれらを含んでいる.
以前にもゴーストとアイデンティティの類似性について考えてみたことを書いた.その時は似ている箇所は多々あると思われるが,結局,アイデンティティ自体がよくわからないので,同じものだとは言ってしまうことはできないと考えた.
アイデンティティの定義は,自己を確立する要素の事だと定義すると,

アイデンティティ = 人間が人間であるための部品(すなわち,自分を認識するためには,自分での顔,自分の声,自分の身体,そして自分の記憶など)

ということになるので,ゴーストとは異なることになると思う.

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