攻殻機動隊 マニア考 -THE GHOST IN THE SHELL, 03 JUNK JUNGLE-

冒頭でバトーは豪邸の庭園に潜入しての監視をしている.み゛んみ゛ん...という鳴き声が書かれていることから,蝉は存在するという設定のようだ.
そこに荒巻部長が熱光学迷彩を纏って現れる.荒巻部長の身体の構造(どの程度義体化されているのかなど)は不明だが,熱光学迷彩を使用できるというのは意外だった.熱光学迷彩は、高度な義体とそこに埋め込まれた装置によって実現されると思い込んでいたからだ.荒巻部長には高度な義体化がされていないという思い込みもあった.熱光学迷彩を使用するためには,どの程度の装置が必要なのかは不明だが,前話でも内務大臣が有線通信が可能なジャックが埋め込まれていたし,ストーリーの舞台である2029年には,多くの人が電脳化や義体化を行うような状況なのかもしれない.

そして、荒巻部長の口から「人形使い」というキーワードが発せられる。人形使いとは、一体何なのか…。バトーは正体不明の超ハッカーと言っている.

荒巻部長はバトーの回線から休暇中の草薙素子に召集をかけるように命ずる.休暇中の草薙素子は外界とのネット接続を絶って電脳FUCK中だった.ただし,ネット接続を絶ってハッカーのジャムを防いでいても,脳の鍵を持っている場合は,バトーのように直接コンタクトを取ることができるということらしい.バトーは草薙素子にアクセスした際に,自分の体に無い器官からの体感情報を取得してしまい,苦しむという点が面白い.また,士郎宗方氏のコメントによると電脳FUCKは擬似体感ソフトや,増感効果を持つプログラムを駆使して行うものだということだ.現在のように薬物等を用いて脳を刺激して感覚を敏感にさせるのではなく,そのような効果を生み出すのはプログラムというのは,電脳であるからこそ成立することだと思われる.ここで,極端な義体化が進んだ場合には,妊娠・出産はどのようなものになるのだろうかと思った.技術的な進歩によって,義体に妊娠・出産ができるような機能を持たせることが可能になるのだろうか.また,そのようなことが現実になれば,それらに関する複雑な法規制が必要になると想定される.

草薙素子が召集場所に現れると,そこには旧型とされるHA-3ウィルスに侵入され,脳殻を外した外務大臣の通訳が横たわっている.通訳は,あえてウィルスを送り込ませることで,操作に協力しているようだ.HA-3ウィルスは人格乗っ取り型らしく,ウィルスを送り込んでくるハッカーは場所を変えながら7分毎に5秒ずつ侵入を行い,その度にプログラムを送り込んできているようだ.それらのウィルスプログラムが全て揃った段階(草薙素子は「ゲノムが揃う」と言っている)でウィルスが作動を始めるので,全てのプログラムが送り込まれる2時間後には通訳の脳をネットからシャットアウトしなければウィルスによって乗っ取られてしまうようだ.少しづつ送り込まれているプログラムは単体では無害という設定らしい.

ごみ収集の作業員が,ゴミ収集場所近くの公衆電話の下部にテープで留められたメディアを剥ぎ取って通信している.この通信によって,1回分のウィルスプログラムが送り込まれていると思われる.公衆電話にはスキャナーのようなものが付いており,ピピっと音を立ててメディアを読み取っている.公衆電話には受話器もついているので,現在の公衆電話にある通話機能に加えて情報送信機能を備えているようだ.ゴミを出し遅れた人に聞き込みをしたボーマは,「電話をしていた」という口述に反応して,清掃車を追い始める(絵では電話をしている様子は伺えず,先述したようにメディアを読み込ませているように描かれているので,公衆電話からデータを送信することも電話をかけると言うようになるのだろうか).それと同時に草薙素子にその情報を送信する.このような通信はどのような周波数帯で行われているのかは不明だが,現在の携帯電話等で用いられているような簡単に混信を引き起こす2.4GHz帯ではなく,限られた者だけが使用できる周波数帯を使用していると考えられる.

ここで,ごみ収集車や,追跡を行う公安のメンバーはハンドル付きの車に乗っている.タイヤも4本ついており,現代の車と同じに見える.自動車に関してはあまり進歩しないという設定なのか,それとも,現在の自動車の姿や操作方法は完成形であるという想定なのかはわからない.そういえば,前話の最後で荒巻部長はヘルメットを被り,スクーターで去っていった....

7分おきにウィルスを送り込んでいる作業員は,彼の妻の気持ちを知るために防壁破りを送り込むことによってゴーストハックをしていると思い込んでいる.相方が「よく防壁破りが手に入ったなあ」と言っていることからゴーストハックが高度な技術であり,恐らくヤミ値で高額なものなのだろうと推測される.作業員は飲み屋で知り合った「親切な奴」が手伝ってくれていると言っている.意気投合した新たな友達が高度な技術を持ったハッカーだったということだろうか.しかし,これらは全て擬似体験であったことが後で判明する.作業員は独身で奥さんはいなかったのだ.また,この疑似体験は2029年時点では消去することが難しいという設定のようだ.
収集車の巡回路に警察からアクセスがあったことが作業員に伝えられると,作業員はゴーストハックがバレたと思い,ゴミ収集車の経路を先回りして,公衆電話の下にメディアを貼り付けている「親切な奴」に伝えなければならないと,巡回場所を飛ばして彼の元に駆けつけようとする.その様子に気づいた「親切な奴」は自分が売られたと勘違いして収集車に向けて発砲する.その時に光学迷彩を纏いながら「親切な奴」に近づいていたトグサの乗ったフチコマも被弾し,光学迷彩が溶けてしまう.草薙素子は17式光学迷彩を纏って追跡するが親切な奴が撃った弾が消火栓にあたって水を被ったことで光学迷彩が溶ける.光学迷彩は被弾したり水がかかることに弱いようだ.また,追跡中にトグサが草薙素子に「なぜジャマするんです!?」と聞いたり,犯人に発砲する際に「あッ」と言っているのは,その度に草薙素子がトグサのゴースト侵入鍵を使ってトグサに侵入したためだと思われる.

突入現場にいた人形使いと思われていた人物を見て,草薙素子は「こいつも人形だわ」と言う.この人物も疑似体験によって自分が人形使いだと思い込んでいるということなのだろうか.

疑似体験をさせられた作業員の取り調べを覗きながら,荒巻部長は「疑似体験も夢も存在する情報は全て現実であり,また幻なんだ」と言っている.この一言には非常に考えさせられるものがある.作業員は同僚に夢だったと言いながら働いているコマで本話は終了するが,自分の中の記憶に実感を伴って記憶が残っているにも関わらず,それが全て誰かから送り込まれた偽の記憶だったとしたら,自分の他の全ての記憶が信じられなくなってしまうように思う.そんなこともあるということで割り切って生活していくしかないのだろうが,この記憶は本物なのだろうか...別の記憶はどうなのだろうかと考えてしまい,自分の事が信じられなくなるような状態になってしまうように思う.

ここで,ゴーストとは,一体何なのだろうかと考えてみた.恐らく,その人間をその人たらしめているものなのだろうと思われるので,生身の人間にとっては,アイデンティティ,記憶,身体的な特徴や(傷などの)痕跡なのかも知れないと思った.
それがサイボーグである場合はどうなのだろうか.義体化によって身体的特徴などは変えることができる(もしくは変わってしまう)ので,これはゴーストではないことになる.記憶はどうなのかと考えると,電脳化されていることから,記憶をコピーしたり書き換えることは可能だと想像される.実際に今回の話の中でも,人形使いは,実際にその人が体験していない事柄を記憶を埋め込まれている.人間使いに操られてしまった作業員,親切な奴,および自分のことを人形使いだと思っている人物はゴーストを持っているようである(ロボットではないという意味).となると,記憶もゴーストではないことになる.すると,先に挙げた生身の人間を例に挙げて考えたゴーストで残ったものはアイデンティティだけとなる.しかし,アイデンティティは言葉としては非常に都合が良いが,それが何なのかと考えるとよくわからない.その人の過去の経験(すなわち記憶,感情,および考察など)によって形づくられたもののようにも考えられるし,生まれつき持っていたものが,その後の経験によって強化されるものとも考えることができる.
一体,ゴーストとは何なのだろうか....

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